コラム|嗚呼、素晴らしき仮面舞踏会

嗚呼、素晴らしき仮面舞踏会

むちゃくちゃ痒いです。
目がかゆいのです。
目玉を取り出して、丸洗いしたい今日この頃。
皆様いかがお過ごしでしょうか?

なんか頭もボーっとしていて、
年々症状が強くなっていくような気がします…(汗;)

あぁ、杉の木が無い南の島に行きたい。

花粉症患者のパラダイス"沖縄"へのバカンス熱望中のはぐれ探偵微熱系「土谷」です。

ところで久々に万年独身貴族の土谷にとって許せん男が登場しました。

その男とは、とある別れさせ工作のターゲット。
依頼人は20代後半の女性。ターゲットは几帳面な彼氏とその奥さん。
そう、依頼人と彼氏はいわゆる不倫関係ですね。
その彼氏というのが許せん男というわけです。

「一緒は無理だけど、一緒にいようね。」が口癖の彼。

   なんじゃそら! 都合よすぎ!!

都合のいい女でいることにも疲れ、自身の出会いもその先にあったはずの幸せも犠牲にしてきた数年間…。
暗い恋愛の影は、甘美な香りと苦い思い出に彩られています。
しかし彼から電話があると逢いにいってしまう彼女。

迷宮にはまり込んだ彼女は何度も彼に奥さんと別れてほしいと哀願したのでした。
なのに彼の返事はいつも
「一緒は無理だけど、一緒にいようね。」
それなのにこういう男性に限って、嫉妬深かったりするのです。
それが愛情の表れだと思うほど彼女は子供じゃありませんでした。

執拗に別れを迫る彼女に嫌気がさしてきたのか、連絡が減った彼氏。

  勝手なモンです。

そんな彼の態度に怒りと不安を覚えつつ、弊社に依頼してきたのです。

連絡が減った彼の本音を探るべく、開始した我々。
事前に素行を調べたときに、その男の仮面は剥がれ落ちたのであります。

まずは人体確認から、ということで勤務先から出てくる彼を待って張り込みます。

車移動の彼。ちょっとイカした高級車に乗ってます。
ブルーメタリックの流れるようなボディラインがなんか気に食わん。

  待つこと2時間・・・。

定時より少し遅めに彼は出てきました。
写真より若い感じ。
清潔感があってキレイ好きそうな、諸事に細かそうなタイプ。

誠実そうなマスクの下には駄々っ子の素顔が隠されているとは誰も気がつかないでしょう。

上着とカバンを後部座席に放り込み、発車する彼を横目に見ながら、土谷号もおもむろに始動です。

  うんっ、後部座席?
普通助手席に荷物置かないかい!?

  なんやらきな臭いですぜ、旦那!

わけのわからんことをつぶやきシローしながら、(ふるっ!)
前方を見据える土谷。

自宅とは明らかに異なる方向に向けて疾走する彼の車。
どうやら駅に向かっている様子。

  土谷の野生の勘 的中!

駅前のロータリーに乗り入れた彼の車に、若い女性が小走りで乗り込んだことを確認。
依頼人でも奥さんでもないことは確か。

  この野郎ぅぅぅ!!
憎いぜあんちきしょう(怒)

しかもファミレスにもよらず、ラブホテルに一直線ですわ。
おかげで手間は省けましたけどね。

ホテルの駐車場は幸いにも野天。
しかし出てくる二人を撮影するのに絶好のポイントには駐車車両が。

  うーむ、そうはいつもうまくはいかないか…。

駐車車両が早く退いてくれることを期待しながら、仕方なくちょっと暗い準ポイントに駐車。

ホテルに入った時間と彼の性格から考えて、休憩3時間ピッタンコで出てくると踏んだ土谷。

この撮影位置では暗くて写りが悪い。
そこで二人が出てくるちょい前にエンジン始動、ライト点灯にしてその明かりで撮影することに。
建物の構造上、客同士が見えないようになっているので彼らのちょい前に出てきたばかりといった感じを装うわけですね。

  うーんアタマいいー。

助手席に女性工作員を座らせ、駄目押しに「るるぶ」を広げさせます。
土谷はナビに行き先を入力しているフリをしながらカメラを構えます。

  緊張の一瞬…。
来た!ドンピシャリ!!
いただきまーす、てなもんです。

あとは彼女が何者かを洗うのみ。
緊張は続きます。

このあとの二人の行動として考えられる三択は、

①彼が彼女を自宅まで送っていく。
②とりあえずレストランなどで食事をする。
③彼女を拾った駅まで送り届ける。

ここで土谷、二人の様子からして③ではと推理。

答えは・・・、
車を発進させた彼は、来た道を戻っていきます。

  うむむ、これはっ!

   大正解の予感!

しかーし、車は駅手前500m付近で停車。
なにやら別れの挨拶チューをしている模様。
隣を何食わぬ顔して通り過ぎながら、確認しちゃいました。

  正解は①でした・・・。

チューしてる隙にこちらも車を止め、彼女の追尾体制を整えます。

名残惜しげに助手席から降りる女性。
手を振りながら去っていきます。昨日今日の関係ではないのは一目瞭然。

無事女性の自宅を突き止めたあと、依頼人に電話報告。
ビデオを見せて欲しいとのことで、夜も遅い時間でしたが、事務所まで来ていただくことに。

事務所のテレビにビデオをつなぎ、さっき撮ってきたばかりのホヤホヤ映像を再生します。
食い入るように画面を見つめる彼女。

思っても見なかった展開に驚愕を隠せない表情。
白くなるほど握り締めた握り拳が、なによりも雄弁に物語っています。

目の前の惨いまでの現実…。
明らかになった彼の裏切り行為。
連絡が減ったことの原因の判明。

彼女の脳裏を走馬灯のように駆け巡っているのでしょう。
口を固く結び、再生が終わった青い画面をただひたすら見つめている彼女。
痛いほど気持ちが伝わってきます。

一通り報告を終えた土谷は掛ける言葉を見つけるのに苦労しました。
ビデオテープの巻き戻し音だけが室内に響いています。

巻き戻しが終わり、テープが止まったのを待っていたかのように溜めていた息を吐き出した後、彼女が口を開きました。

 「もう疲れました。彼とは別れます。そのほうがお互いのためだと思うんです。」

こんなことを言ってはなんですが、我々は経験上、そんなにすぐにあきらめられないことを知っています。

・これだけ長い時間をかけたのだから…
・これだけ労力を使い、彼を想い続けたのだから…
・もう他に好きな人ができるとは思えない
・この先彼以上の男性とは巡りあう事は無いだろう
などなど。

今は感情のカオスの極みにあるがために、渦巻く気持ちの波から緊急脱出するために自分自身を思い込ませようとするんですね。

そして疲れた、別れたい、愛している…どれも本心なのです。

土谷は意を決して、

「彼から逢いたいと連絡がくれば、貴女は悩み、怯えながらも彼に逢いに行くかもしれません。しかしそうなっても自分を責めないで下さい。気持ちが落ち着いたら、考えが変わるかもしれません。また彼の気持ちや状況も何がきっかけで変わっていくかわかりません。その時はいつでもお気軽にご相談ください。」

というようなことを言いました(確か…)。

彼女はか細い声で、
「はい、ありがとうございます。また相談させてください。」
と言ってくれました。

工作へと進む前に案件としては一旦終了ということになりましたが、彼の素顔が見えたことにより彼女は自分を見つめなおす機会を得て、満足していただけたようです。

それにしても素顔ってなんなんでしょう?
彼自身は素顔を、奥さんの前で、彼女の前で、それとも若い女性の前で見せているのでしょうか…。

人はそれぞれみんな仮面(ペルソナ)を被り、人生劇場という舞台で仮面を付け替えながら、自分を演じていると言われてます。

  自分が理想とする男性像、

  自分が理想とする女性像、

  異性の前での貴女、

  恋人の前での貴方、

  配偶者の前での彼方、

  みんなの前でのアナタ、

  独りで街を歩くあなた…。

今のあなたはどんな顔をしてますか?
どんな仮面をつけてますか?

月記メニューに戻る