コラム|マイケル・ジャクソンを尾行せよ!

マイケル・ジャクソンを尾行せよ!

日夜、調査に明け暮れる。

最近は、尾行に次ぐ尾行で、寝るヒマもない。
我々的には充実した素行調査ライフをエンジョイしているとでも言っておこうか。

しかし、一般人ですら大変な尾行なのに、追う相手が天下のスーパー・スターだったとしたら…。
さすがのオレですら、顔が青くなるかもなあ。

っちゅうのは、ある友人から、
「超有名人を追跡して欲しいって依頼されたらどうする?」
と、聞かれたので、チラっと考えてしまったからなのだ。

その友人は、図らずも、そんなスーパー・スターの逃亡劇を目の当たりにしてしまったらしい。

ときは11年前。

場所は東海道新幹線の東京駅であった。
「オレ、そのとき東京駅の弁当屋でバイトしてたんだけどさあ。偶然、現場に居合わせちゃったんだよね」

そのスーパー・スターこそ、現在、幼児虐待疑惑の渦中にあるマイケル・ジャクソンであった!

そりゃ、大変だよ。
尾行できるワケないじゃん! 

だって、マイケルだよ?

当時、ポップ・スターとして名声を極め、日本での人気も絶頂期だったマイケル。

来日を果たした彼は、広島講演を終えて東京へ移動する手段として新幹線を
使ったのであった。

しかし、そんな情報はファンに筒抜け。

熱狂的な輩がホームに溢れていたそうな。

「やけに人が多いなあって思ってたら、マイケルが新幹線で来るって言うじゃん。ホント、こんな中に出てきたら死んじゃうんじゃないのって感じだったよね」

マイケルがホームに降りようものなら、その瞬間にパニック必至。

そんな状況の中、マイケルを乗せた新幹線がホームに滑り込んできた。
騒然さを増すホーム。飛んで火に入るマイケル・ジャクソン。
無情にも新幹線の扉は開かれた…。

どうやって、かわすの?

「マイケルぅ~! マイケルぅ~!!」

ホームがまさに修羅場と化したそのとき、マイケルらしき人物がホームに降り立った。
キラキラのステージ衣装にお決まりの帽子。
なにも、そんなわかりやすい格好で登場しなくたって…。

と、マイケルがホームから改札口へ向ってダッシュ! 
ダンスさながらの軽快なフットワークで階段を駆け降りて行った。

「キャ~、マイケルぅ~! マイケルぅ~!!」

ホームにたむろしていたファンの半分程度がドドドーッと、マイケルの後を追った。
そのときの様子をホームで見守っていた友人は、あるファンのセリフを耳にした。

「あれは囮よ。あんな格好で、しかもガードマンなし。次に出て来るのが本人よ!」

囮を使うの? 
なんか古典的過ぎない? 

マイケルぅ~。

すると、今度は熊が新幹線から出てきた。
熊といっても着ぐるみだったのだが、またまた、そんなわかりやすい格好で…。

「あれがマイケルよ! マイケルぅ~! マイケルぅ~!!」

さっきのファンが先導して熊を追い駆けていった。
しかし、これも囮であった。超派手なかわし方。

逃げる方法までスーパーなスターって感じ。

「何か、皆、大変だなあって思ったよ。偽マイケル追ったり、熊についていったりして振りまわされてさ。大体、そんな格好で出てくるワケないじゃん。いい加減、見飽きちゃったから、帰ろうと思って従業員用のエレベーターに向ったのね。そしたらさあ…」

そのとき、ホームにはライオンの姿があった。
これも着ぐるみだったのだが、また囮。
友人も、そう思っていた。

しかし、次の瞬間、ライオン男が頭に被っていた面を取ると、マイケル・ジャクソンの顔が現れたというではないか!これには友人も驚き、エレベーターの前でボーゼンとしていた。

すると、友人めがけて屈強な黒人たちが押し寄せてきて"PUSH THE BOTTUN!"と叫んだ。

エレベーターを開けておけという意味だったようだ。
慌てて言われたとおりにした友人。

まだ、少なからずホームに残っていたマイケルファンは、ライオン…ではなく、マイケルに向ってまっしぐら。一瞬、立ち止まり、ファンたちに向って茶目っ気たっぷりの笑顔を見せたマイケルが、エレベーターに駆け込んできた。

ファンをあざ笑うかのように閉じていく扉。
エレベーターの中には黒人ガードマン数人とマイケル・ジャクソン、そして友人が乗っていた。

地下に着き、エレベーターの扉が開くと、キュキュキューッとタイヤを鳴らしながら
リムジンがやって来た。黒人ガードマンが車のドアを開けてスタンバイすると、乗り込む瞬間、マイケルが肩を叩きながら友人に言ったそうだ。

"THANK YOU!"

「オレ、ファンじゃなかったけど、スゲー好きになっちゃったね。やっぱやること違うなあって感じでさ」

ちなみに、このときマイケルは、新幹線8輌分の車輛を独占していたそうだ。

つまり、東京駅のホームを半分使って、この"着ぐるみ大作戦"が繰り広げたワケである。

「どう? 相手がマイケルだったらさすがにオマエでも追えないだろ? 」

…(絶句)。

ええー、くれぐれもスーパー・スターの追跡だけは、ご依頼なさらないようお願い申し上げます(汗)。


大阪ナニワのブルース

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