コラム|愛人宅に通う夫を追え!

愛人宅に通う夫を追え!

どこまで歩く気だ、オマエら! 膝が笑ってきた…。
もう、そろそろ座らせて! 

その日、オレは久しぶりの現場に参加していた。

アンサー慣れしたカラダには、冬の弱い陽射しでさえ脳髄がとろけそうなどの刺激だ。

ときはクリスマス・イブイブ。つまり23日の祝日である。

アンサーは休み。

っちゅうワケで、とある素行調査に借り出されたのだった。

最初に言っておくが、寝てない。

前の日は、祝日前ということもあってアンサーは大忙し。
片付けが終わったときには鳩が元気に鳴いていた。

もう横になってる時間はない。
老いさらばえたカラダには不眠がもっともこたえるっちゅうに…。

午前8時。

オレは、張り込み場所の練馬区に到着した。
現地で先行組のスタッフと合流。
現状報告を受ける。

今回の依頼人は、主婦だった。
亭主の浮気現場を押さえるというのが、そのミッション。

この亭主。
女房、子供をほったらかして、祝日に遊ぶつもりらしい。
少なくとも、依頼人は、そう睨んでいる。

本人は休日出勤だと言っているらしいが、真偽のほどは、あと1時間もすればわかる。

申告通り、会社に行ってくれれば、オレは引き上げ。
人数的に先行組だけでこと足りるからだ。

ホンネを言えば、会社に行って欲しい。
でも、尻尾を掴みたい。フクザツな心境…。

午前8時30分、旦那が出てくる。

スーツに仕事用と思われるカバンを携帯。
見た目はフツーの出勤に見える。

駅へと歩を進める旦那のあとから追尾を開始した。
ムムム、この順路は大江戸線か。
亭主の会社は牛込柳町。
ということは、本当に会社なのか? 

残念。でも、ちょっとウレシイ。
アレ、走りはじめたぞ。
発車しようとする電車に飛び乗ろうと、ダッシュする亭主。オレも下り階段を段飛ばしで駆け下りる。

あああ、コケそう! プシューッ。ハァ~、間に合った。

亭主とともに間一髪、乗り込んだ電車は、光ヶ丘行き…。

って、逆方向じゃん! 間違えてるよ、アンタ! 
しかし、亭主は涼しい顔して座りながら、中吊りを読んでいる。おかしい。
ゼッタイにおかしいよ。

乗り遅れた先行組にメールを入れようと携帯電話をピコピコしはじめた矢先、亭主が豊島園駅で下りた。

おかしい。メッチャおかしいよ。

地上に上がった亭主は、3分ほど歩き、とあるマンションに消えて行った。

仕事の取引先? 

なワケはない。
どう見ても、すべて居住用だ。
おかしい。やっぱ、おかしいよ。

待機を開始して20分ほどで、連絡しておいた先行組が到着した。

マンションはオートロック。
亭主が何階に行ったかまでは確認できなかった。

しかし、出入り口はひとつだけ。
オレたちは、目の前の道路に車を止め、ビデオカメラを設置して待ち構えた。

午前9時53分、亭主が出てきた。
って、格好が違うじゃん! 
横の女、誰なのよ!

解説しよう。
つまり、この女が愛人で、亭主が女のマンションに通うスタイルの不倫関係を結んでいるっちゅーワケだ。
どうやら、着替えまで置いてらしい。

ジーンズにセーター、カジュアル・ジャケットにマフラーという出で立ちでマンションから出てきた亭主。

女は20代中盤で、ロングヘアー。
白のウールコートを羽織り、上品な印象を与える美人だった。

とにもかくにも、まず、証拠VTRをゲット! 

オレたちは、さらに追尾に移った。
ふたりは、仲良さそうに手をつなぎながら、大江戸線のホームへ。

そして、今度は、新宿方面の電車に乗車。
こうなったら、どこへ向うかは見当もつかない。

しかし、あれほど長~い1日になるとは、このとき想像もしていなかったオレなのであった…。


大阪ナニワのブルース

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