Q&A|共同親権

共同親権

共同親権ってご存知ですか?
もしかしたら聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。
単に共同親権と言った場合、婚姻中の夫婦においてはごく当たり前のことなのです。
それもそのはず、我が国では民法818条により、親権は婚姻関係にある父母が共同して行うものとされているからです。
よく考えてみれば当然のことですよね。だからこそ、ピンと来ない言葉なのかもしれません。
では、もし夫婦が離婚してしまったとき、子供の親権はどうなるのでしょうか。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この場合親権者を父母のどちらかに定めなければなりません。
日本においては民法819条により、離婚後単独親権が前提であり、たとえ実の親であっても親権を分割することはできないのです。
不倫だの不貞だのという離婚トラブルに決着がつけば、今度は親権争いという新たな問題が待っているわけですね。
親権といっても財産管理権や監護養育権がありますが、それらの親権者を父親にするか母親にするか、ここでも決着をつけなければなりません。
親権が配偶者に渡ってしまえば、子どもを養育していく権利や法律行為などの権利も相手側の特権となるわけです。
そうなれば実の子どもであるにも関わらず、好きな時に好きなだけ会うという親として当然のことができなくなるかもしれないのです。
極端な話ですが、親権者でない親がいくら自分の子どもだからと言って勝手に子どもを連れて帰ってしまえば、未成年者略奪罪に問われる可能性もあります。
親権を持たない親は、子どもと触れ合う自由を奪われる。
そのようなイメージを持つ方も多く、ゆえに何としてでも自分が親権者になろうと必死なのでしょう。

さて、ここで話を冒頭に戻しましょう。
はじめに共同親権という言葉を挙げましたが、もしこの権利が離婚後も継続するとなればどうでしょうか。
つまり、離婚後共同親権。率直に言ってしまえば、離婚をした後も子どもの親権は父母の双方が所持するということ。
実際、この制度が制定されている国は意外にも多いのです。
たとえば米国を例に見てみると、州によって多少の違いはあれど、全ての州において共同監護(共同親権)が認められています。
しかしこの制度と上手く付き合っていくためには夫婦の協調性が重要となります。
ところが、夫婦の考え方が合わないことで離婚という結末に至ったのに、いざ協調性と言われたところで歯車が噛み合うかどうかですよね。
では何故、離婚に至ってまで夫婦の協調性を求めなければならないのか。それはアメリカの定める共同監護の目的にあります。
共同監護の目的は子どもの成長を第一優先として考えられています。子どもは親の様子を見て育つわけです。
離婚したとはいえ、親権を父母両方に与えず単独とし、子どもがどちらかと接触しづらい環境を作り出してしまえば、子どもはストレスを感じてしまいます。
また自分の親は一人しかいないという現実から、精神的、行動的にも不安定となりがちです。
成長期の子どもに親の事情をなるべく影響させないためにも、常に両親と会うことのできる環境が必要と考えられているのです。
実際の統計においても、ストレスなく両方の親に会える環境で育った子は、そうでない子に比べて問題が少ないとされているようです。

でも共同監護と言えども、良い点ばかりではありません。実は問題点も多くあるようです。
先ほども説明したように共同監護の条件としては、父母の協調性があっての権利とお話しました。
もしお互いの意見が噛み合っておらず、紛争が絶えなければ子どもはそのトラブルに巻き込まれる一方です。
この状況は決して子どもに良い影響を与えるとは言えず、むしろ逆効果です。
また、好きな時に子どもと会えるからと言っても、その頻度や父母の住む場所によってはストレスを増幅させてしまい、精神的にも乱れる要因にもなるとされています。
双方の転居や失業、再婚によって共同監護の内容を柔軟に変えていかなければ、本来の制度の意味もなくなってしまうということです。

確かに離婚後も子どもと自由に会う権利や養育していく権利が平等に与えられることは良いことです。
しかし、夫婦の感情が入り込み共に憎しみ合うなかでの共同親権であるならば、本来の目的ではなくなると同時に子どもにとって決して良いことではありません。
共同親権を望むからには、お互いが譲歩し合い協調することが必要不可欠なのでしょう。
離婚後どうしていくのか、ある程度の内容は始めの段階で取り決めておくことが大切ですが、生活環境が変わればその内容も変化させていく柔軟さが必要です。
これができないようならば、単独親権であるのと大して差はないないように思います。

さて日本においても離婚後共同親権の法制化運動はあちこちで行われておりますが、未だ実現には至っておりません。
その真相については定かではありませんが、様々なことが関与しているという話も耳にします。
例えば、離婚問題と親権問題は1セットとして考えるのが一般的です。
ゆえに離婚の相談を受ける弁護士やそれに関わる裁判では、同時に親権問題が付きまといます。しかし相談を受ける側や裁きをする側にとっては悪いことではありません。
ところが、離婚後共同親権が法制化されれば親権争いに関する問題や相談は今よりも減ると推測されます。
そこで影響を受けるのが、先ほどの裁判所や弁護士などでしょう。つまり案件が減れば、弁護士への依頼や相談は減ってしまう。
そうなれば、当然関連機関の収入も減少することとなるでしょう。そのあたりの需要を安定させるためにも離婚後共同親権の法制化は未だ認められないという噂もあるようです。

いずれにしても、離婚後の共同親権が認められたからといって全てが上手くいくとは限らないのです。
夫婦仲や双方の生活環境、子供に対する考え方によっては単独親権と共同親権のどちらが良いのか、一概に判断するのは難しいところですね。


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